平成26年度4月期A-2 いろいろな電気現象
知識問題です。選択肢を一つ一つ見ていきましょう。
1・・・
圧電直接効果の説明です。代表的な使用例としては、エレキギターなどの楽器に用いられるピエゾピックアップがあります。弦の振動を受け取った水晶振動子が力を感じ、素子の出力に電気信号を発生させます。これをアンプやスピーカにつないで音にして演奏するというわけです。
2・・・
ホール現象の説明です。磁界中の導体・半導体に起電力(電圧)が発生するというものです。代表例としてホールICというものがあるようです(私はこの解説を書いているときに初めて知りました・・・)。位置やモーターの回転を検出するセンサーとして使われているようです。
フレミングの法則と間違いやすいですので注意してください。物体そのものの移動や動かす力と電流・磁気との関係を表すのがフレミングの法則です。フレミングの左手の法則では、磁界中の導体に電流を流すと、導体そのものを動かす力が発生します。フレミングの右手の法則では磁界中の導体を動かすと、導体そのものに電流が流れます。違いを整理して覚えてください。
3・・・
磁気ひずみ現象の説明です。ちなみに
文の前半:「磁性体に外部から磁界を加えるとひずみが生じる」現象を磁気ジュール現象、
文の後半:「磁化された状態でひずみを与えると磁化に変化が起こる」現象をビラリ現象
といいます。2つを合わせて磁気ひずみ現象と言います。
代表的な例がメカニカルフィルタです(ロックウェル・コリンズが有名ですよね、私も1つ持っています)水晶の伸び縮みの固有振動数を利用してBPFの働きをさせているようです(詳しい原理はネットで各自お願いいたします・・・)。
4・・・
ゼーベック効果の説明です。ゼーベック効果=温度計の話、と考えれば覚えやすいと思います。代表的な例が熱電対です。説明文の通り、熱を検出する部分は金属なので高温になる箇所の温度を測るのに便利です。これが日常使っているガラスの温度計だとそうはいかないですよね。熱で「パリン!」と割れてしまいますね。私が以前仕事で使用していた装置が700℃を超える高温を使用していたのですが、その装置の温度の測定に使われていたのがまさにゼーベック効果を使用した熱電対でした。
答え:④
こういった問題は、無線や電子部品に関わる知識をふやすいいきっかけになります。ぜひ答えだけでなく、それぞれの電気現象が使われている部品などを調べてみましょう。逆にもととなる原理を知らないで使っていると危険なものも中には存在しています。アマチュア無線に限らず「安全」はすべてに優先します。安全に無線機器を取り扱うためにも、電気物理・電気回路などの基礎からしっかり理解するようにしましょう。
平成26年4月度A-1,コンデンサに蓄えられる電荷とエネルギー,計算問題を勉強するとはどういうことか
1,問題を解く準備
問題を見たら、まず
①何を求めなければいけないのか?(問題の答え)
②わかっていることは何か?
③答えを求める途中で必要だけど、わかっていないことは何か?
を整理してください。
今回の問題でいえば、
①はコンデンサに蓄えられたエネルギーの量[J]、
②はコンデンサにかかっている電圧2[V]と、
電圧をかけた結果、コンデンサに溜まった電荷(電子の粒々の量)3[μC]。
③は特に無し。
となります。
2.コンデンサの基礎知識1
ここで、コンデンサの静電容量、蓄えられる電荷、電圧の関係を整理します。コンデンサはそもそも静電気を蓄える働きを持つ電子部品です。いわば電子を溜める入れ物みたいなものです。ここでは、中に電荷(電子の粒々)を溜める風船みたいなものとイメージしてみます。そうすると
風船のサイズ=静電容量C[F]
風船に空気を吹き込む力=電圧E[V]
風船の中に溜まった空気=電荷Q[C]
※静電容量の記号「C」と単位[C](読み:クーロン)をごっちゃにしないこと。
というイメージになります。(あくまでこれはたとえで、実際電荷がいっぱい溜まっても、風船のようにコンデンサの外見が膨らんだりすることはありません。ただ風船と同じように、電圧をかけすぎる(息を吹き込みすぎる)と、風船が割れるようにコンデンサも壊れます。)
そして、この3つには次のような関係があります。
…(ⅰ)
この式をもう一度風船のイメージで考えましょう。電圧が一定で、風船のサイズ(静電容量)が大きくなれば、それだけたくさんの空気(電荷)が風船の中に入りますよ。また、風船が大きく膨らんでいるなら、それだけ強い息の力(電圧)で風船の中に空気を送り込んだことがわかるというわけです。
3.コンデンサの基礎知識2
しかし、今回の問題はやっかいなことにコンデンサ内部に蓄えられた「エネルギー」を求めないといけません。コンデンサの内部にエネルギーが溜まるとはどういうことか?それはコンデンサの中に入った電荷が溜まった量に応じて、エネルギーを持っているということです。電荷の溜まったコンデンサの端子に触れればバチッと感電したり、LEDをつなげばひかったりしますよね?風船で言えば、めいっぱい空気を入れた風船の口を放せば勢いよく風船はどこかに飛んでいきますし、風船を針で刺せば「バン!」という大きな音をたてて割れます。それを数字で表すとどのくらいのものでしょうか?ということを言っているのです。
そして(ⅰ)式と同じように、コンデンサに溜まった電荷と、エネルギーの量、コンデンサにかかっている電圧を表す公式はすでに与えられていて、下記のようになります。
…(ⅱ)
コンデンサに蓄えられるエネルギーW[J]
電荷Q[C]
電圧E[V]
4.計算
あとは1で整理した①何を求めなければいけないのか?(問題の答え)②わかっていることは何か?の内容を(ⅱ)式に当てはめて計算するだけです。今回は③は特にないですね。
エネルギーW[J]=1/2×電荷Q:2[μC]×電圧E:2[V]…(ⅱ)
μは10^(-6)という意味ですよね?よく計算するときに忘れたり、間違えたりします。注意しましょう。
W=1/2×3×10^(-6)×2
X=3×10^(-6) -6乗をμに戻して
X=3[μJ] 答え ③
4.数学・公式とは「道具」だ
余談ですが、私は「数学の計算や各種の電気・電子の公式とは道具」だと考えています。ネジを締めるときにはドライバーを使いますし、くぎを打つときにはトンカチを使いますよね?そして、ドライバーにもトンカチに、も「ただしい」使い方があります。ドライバーであればネジを締めるときは、ネジの縦の軸に垂直に力を加えないといけないし、トンカチを打つときはくぎに垂直に打たなければ真っ直ぐくぎが入ってくれません。工学の各種公式もこれと同じようなものです。
何百年という科学・工学の歴史の中で数々の公式(道具)が生み出されてきました。今回の問題でいえば、「コンデンサに電圧をかけたときに内部に溜まる電荷の量」を求める道具が(ⅰ)式ですし、溜まったエネルギーを求める道具が(ⅱ)式です。そして、この道具を使ってどう計算すればよいか(数学的知識)?ということが道具の使い方に当たるわけです。
計算問題の習得とは、まさにこの2つを覚えることです。勉強するときには
①この問題にはどの道具(公式)を使えばよいのか?
②どう計算すればよいか?(数学的知識、いってみればその道具の使い方)
の2点に整理整頓してください。難しい問題になればなるほど特殊な道具をしらなければいけないとか、普通の道具だけど変わった使い方をしなければいけないとか、そもそも使い方の難しい道具が出てきます。まずは基本の道具と、使い方をしっかり分かっておくことが大事です。
今後このブログで計算問題を解説するときは、この2点を整理してお伝えするようにしていきます。
※参考文献
丹羽一夫、2006年「新・上級ハムになる本」CQ出版社
Reymond A.Serwey、1995年「科学者と技術者のための物理学Ⅲ電磁気学」学術